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MAR 15th

Research Presentations

​研究発表

研究発表1

若年性研究から見えてきた細胞の若年期ステータス

森 雅樹

国立循環器病研究センター研究所 血管生理学部

小児は日々、成長を遂げますが、その時間制御や量的調節のしくみはほとんどわかっていません。例えば、ヒトでは10年以上の歳月を経て達成される「性成熟」を決まった時期に到来させるメカニズムはなんでしょうか? また小児は発育とともに臓器を「成長」させ、機能を「発達」させますが、その程度を調節する原理はどのように設計されているのでしょうか。背景にあるしくみが明らかになればその分子メカニズムを活用した治療戦略に結び付くと考えています。若年性研究では「子どもの大人との違い」に着目し、なぜ小児では大人では達成できないプラスバランスの変化を持続できるのか、それを時間依存性に調節する方法はどうなっているのかを明らかにすることなどに取り組んでいます。このアプローチでいくつもの新規の知見に出会っており、「細胞内部の状態」も「個体レベルの生理調節」も、若年期には成人期とは大きく異なることが示唆されています。発表では、若年期の生体環境について見えてきた現在地をご紹介するとともに、小児の難病治療に向けた展望をお話しします。 

​研究発表2
 

胎生期内皮細胞性造血による心臓形態形成への寄与

劉孟佳(東京慈恵医科大学) 

胎生期において心臓を構成する多くの細胞は、同一の起源を持つのみならず互いの分化成熟を促すことで形態形成を完成させる。造血細胞はただ血管内を循環するだけでなく、心血管系の形態形成において重要な役割を持つ。当グループは、胚発生期の一時期に心臓の心内膜細胞も造血能を持ち、組織リモデリングに重要なマクロファージ産生の部位となることを明らかにしてきた(Nakano et al, Nat Commun 2013, Shigeta et al, Dev Cell 2019)。この造血性心内膜細胞はマウス胎生9.5日前後に心内膜床に集中してみられ、ホメオボックス転写因子Nkx2-5により特異的に制御されていることが明らかとなった。Nkx2-5転写因子が胎生期の心内膜床部分の内皮細胞に発現し、局所造血に必須であるが、その詳細な分子メカニズムは未解明である。本研究では、Nkx2-5依存的な心内膜造血の制御機構を探るため、Nkx2-5ノックアウト(KO)マウス胎仔(胎生9.5日)の心臓を用いたsingle-cell RNA sequence (scRNA-seq)データを解析した。scRNA-seq解析から、Nkx2-5null心内膜ではNotchシグナル伝達経路に関連する遺伝子の発現が有意に減少していることが明らかとなった。さらに詳細なシグナルネットワーク解析の結果、レチノイン酸(RA)シグナルを減衰させる還元酵素であるDhrs3がNkx2-5下流で造血性心内膜細胞を特徴づける遺伝子となっていることを同定した。In vivoおよびex vivoの解析から、Nkx2-5-Notch axisは造血性心内膜および心内膜床細胞の生成に必須であり、Dhrs3発現によるRAシグナルの抑制はマクロファージへのさらなる分化に重要な役割を果たすことが検証された。以上のことから、Nkx2-5/Notch/RAシグナルが造血性心内膜細胞からのマクロファージ分化に極めて重要な役割を担っていることを明らかにした。

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