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May 10th

Research Presentations

​研究発表

研究発表1

高齢飼育イルカにおけるCKD病態におけるリンの関与

西山 成1、金子希代子2、北田研人1、Nourin Jahan2

1香川大学医学部 薬理学

2帝京平成大学 薬学部 薬学教育支援センター

日本は超高齢化社会を迎え、慢性腎臓病(CKD)患者数が飛躍的に増加している。加齢に伴うCKDの病態は複数の要因が関与すると考えられるが、近年、老化を促進するリンによる腎障害が注目されている。一方で日本の飼育イルカ社会も超高齢化に直面しており、腎機能悪化から死亡に至る例がしばしば報告されている。そこで、本研究ではイルカのCKDの病態におけるリンの役割を検討した。

死亡直前まで腎機能が正常範囲であった心筋炎で死亡した高齢の飼育イルカ(推定年齢約50歳)の剖検腎臓組織を分析した。コンピュータ断層撮影(CT)スキャンとマイクロCTスキャンを実施後、組織学的分析のために10%緩衝パラフォルムアルデヒドで固定した。乾燥組織を用い、マイクロビームX線と赤外吸収(IR)分光法で成分を分析した。さらに、イルカ近位尿細管培養細胞(DolKT-1)を用いてin vitro実験を行った。リンが生じる細胞生存率、細胞毒性、アポトーシスおよびミトコンドリア機能の変化は、それぞれWST-1アッセイ、LDH放出,annexin V/propidium iodide二重染色およびミトコンドリア酸素消費によって定量化された。

腎剖検組織では、心筋炎に起因する腎梗塞を除き、ヘマトキシリン・エオジン染色で明らかな糸球体や尿細管間質の変化は観察されなかった。しかし,CTスキャンおよびマイクロCTスキャンでは、腎臓の髄質に石灰化像を認めた。また、腎髄組織にはVon Kossa染色陽性の部位が認められた。微小領域X線回折とIRスペクトロメトリーにより、石灰化像の部分にハイドロキシアパタイトが多く含まれることが示された。DolKT-1細胞を用いた実験では、リンとカルシプロテイン粒子(CPP)投与によって、細胞の生存率低下やLDH上昇が生じた。しかし、細胞のアポトーシスとミトコンドリア機能は影響を受けなかった。これに対し、マグネシウム投与はリンよる細胞傷害は著しく減弱したものの、CPPsによる細胞傷害には影響を与えなかった。最後に、マグネシウムはCPPの形成を用量依存的に減少させることが明らかとなった。

以上、本研究結果により、飼育下の高齢イルカでは、リンによるCKDリスクが示唆された。リンによる腎障害はCPP形成を介して生じるが、マグネシウムの投与により減弱する可能性が考えられることから、今後の介入研究が必要である。

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