小川 佳宏(おがわ よしひろ)
九州大学大学院医学研究院病態制御内科学(第三内科) 教授
九州大学病院 内分泌代謝・糖尿病内科、肝臓・膵臓・胆道内科 科長
学 歴:
1987年3月 京都大学医学部卒業
1993年3月 京都大学大学院医学研究科修了(内科系)
1994年3月 京都大学医学博士
職 歴:
1987年6月~1988年5月 京都大学医学部附属病院内科 研修医
1988年6月~1989年3月 大阪府田附興風会北野病院 研修医
1993年4月~1994年3月 京都大学医学部内科学第二講座 医員
1994年4月~1997年3月 日本学術振興会 特別研究員
1997年4月~2003年3月 京都大学医学部附属病院内分泌・代謝内科 助手
2003年4月~2012年3月 東京医科歯科大学難治疾患研究所分子代謝医学分野 教授
2011年12月~2017年3月 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科分子内分泌代謝学 分野 教授
2017年4月~2019年3月 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科分子細胞代謝学分野 教授
2016年4月~現在 名古屋大学環境医学研究所 客員教授
2016年7月~現在 京都医療センター臨床研究センター 客員部長
2016年9月~現在 九州大学大学院医学研究院病態制御内科学分野(第三内科) 教授
2019年11月~現在 小倉医療センター 客員研究部長
2022年11月~現在 九州大学 主幹教授
2023年1月~現在 九州大学大学院医学研究院 副研究院長
所属学会:
日本内科学会(評議員)、日本内分泌学会(理事)、日本糖尿病学会(評議員)、日本肥満学会(理事)、日本心血管内分泌代謝学会(理事)、日本臨床分子医学会(理事)、日本糖尿病・肥満動物学会(理事)、日本神経内分泌学会(理事)、日本肥満症治療学会(理事)、日本炎症・再生医学会(監事)、日本高血圧学会(評議員)、日本肝臓学会、日本消化器病学会、日本生化学会、日本分子生物学会
The Endocrine Society, American Diabetes Association など
内分泌代謝学からみた生活習慣病の発症機構に関する研究
内分泌代謝学はホルモンによる生体の恒常性維持機構と破綻病態に関する専門領域です。内分泌器官は時々刻々と変化する内外のストレスを感知・統合して様々なホルモンを分泌し、一旦分泌されたホルモンは血流分布に従って身体の隅々に到達し、様々な生理作用をもたらします。私は京都大学医学部在学中に、井村裕夫先生(京都大学元総長)の講義を受けて、ホルモンによる複雑かつ巧妙な全身の恒常性維機構に興味を持ち、医学部卒業後には迷うことなく内分泌代謝学を専攻しました。過去35年間に京都大学、東京医科歯科大学、九州大学と全国を転戦し、臨床講座と基礎講座を行き来するユニークな経験をしました。
京都大学(1987~2003)では、心血管ホルモンのプロトタイプであるナトリウム利尿ペプチドファミリーと代表的な脂肪組織由来ホルモンであるレプチンの臨床的意義に関する分子医学的研究に取り組み、循環器疾患あるいは内分泌代謝疾患における臨床応用の可能性を明らかにしました。東京医科歯科大学(2003~2019)では、単一のホルモンではなく普遍的な生命現象として慢性炎症とエピゲノムに関する基礎研究に着手しました。全身の臓器局所において恒常性維持機構の破綻による炎症慢性化と線維化を生じること、これらの臓器局所の病変が全身における恒常性維持機構である臓器間相互作用の破綻により遠隔臓器に波及・拡大化することを提唱しました。一方、マウスの胎仔期・発達期の環境要因がDNAメチル化としてエピゲノム記憶され、成獣期の肥満発症の感受性に関連する可能性を見出しました。現在の研究拠点である九州大学(2016~)では、古典的な内分泌器官である副腎に焦点を当てて、「ヒト内分泌学」の新しい展開により、加齢性疾患の病態解明と新しい治療法開発を目指しています。
これまでの研究活動により、内分泌代謝学の多くの新しい景色を垣間見てきましたが、恩師と多くの同僚・後輩・共同研究者に恵まれ、国内外の素晴らしい仲間との出会いは何よりもかけがえのない財産です。私も還暦を迎えましたが、好奇心と直感・感性は若い頃と変わらぬままであり、これからも若い研究者と力を合わせてワクワクする新しい内分泌代謝学の景色を見たいと思っています。